かみしめを緩める


どんなときにかみしめますか?


かむことは生きてゆくうえで必要な行為ですし、とても大事な日常的活動です。
いちばん最初に思い浮かぶ身近なかむ行為は食事をするときの咀嚼(そしゃく)だと思います。

前歯でかみ切ったり、奥歯ですりつぶしたりする行為のことを咀嚼といいます。
穀類や野菜、肉類を細かくくだいて胃や腸で吸収しやすくするために、かむことは大いに役立っています。

そのほかスポーツにとりくんでいるときや、重い荷物を持ったりするときは強い力を必要としますので強くかみしめようとします。

ここで言う「かむ」という行為は、奥歯を上下に強くかみしめて、目的に合った力を発揮するための行為のことです。

このように、かむことが大きな力を生み出すということを経験的にわたしたちはよく知っています。

ここまでは起きているあいだ、つまり意識的にかむことについてのおはなしでした。では次に眠っているあいだ、無意識下におけるかむ活動についてふれてみたいと思います。

よくかみしめとか、はぎしり、食いしばりといった表現で眠っているあいだのかむ行為を言い表しますが、これらはどれも無意識の状態でかんでいるため、起きているときの3倍もの力が作用することになります。
結果として、歯がすりへったり、ぐらつきが生じたり、場合によっては頭痛、肩こり、顎関節症などの症状を生み出すことがあります。

これまでこのような症状を歯科医院において対処する場合、多く用いられてきたのがソフトタイプのマウスピースです。ソフトタイプのマウスピースを眠っているあいだに装着すると、上下の歯が直接ふれ合うことなく眠ることができますから、とてもおだやかな睡眠を得ることができます。わたしの医院でも多くの方にこの方法を利用していただいてまいりました。

そこで今回おはなしさせていただく、「次にあるもの」についてですが、用いますのは同じくマウスピースでありまして、こちらはハードタイプのものです。
ソフトタイプのマウスピースにはおもにクッションのようなかみしめる力を緩める役割をもたせていましたが、ハードタイプのマウスピースにはそのようなかみしめる力を緩める役割に加えて、積極的に顎(あご)の動きをコントロールする役割ももたせてあります。

歯を上下にかみしめる筋肉の代表として咬筋(こうきん)というものがありますが、この咬筋が眠っているあいだに過剰なかみしめを起こさせます。この筋肉の作用を(ハードタイプのマウスピースを装着することによって)緩めながら、同時に顎の位置を本来あるべき正しい位置に誘導します。すると必要以上に歯がこすれたり、ぶつかり合ったりすることがなくなりますから、かみしめ、はぎしり、食いしばりは徐々に減少してゆきます。
このように咬筋が必要以上にかみしめなくなると、睡眠も深くなりますし、首のつかれ、肩こりなどもやわらいでまいります。

すべての方に同じような効果があるわけではありませんが、かみしめる力を緩め、さらに顎の動きをコントロールすることで、さまざまな不定愁訴(ふていしゅうそ)が大なり小なり改善されてゆくようです。